卓678 Z世代に見る パワポ普及の微妙な差
水越 卓治 2022.09.23
今年の地理の夏休みの宿題(郷土の課題)の、
WEB上提出期間も、8月24日から8月31日まで。
でも、去年やおととしとは、ちょっと様子が違いました。
( 2022年の高2生の課題アップロード状況。)
PowerPoint(Microsoftのプレゼンソフト)での作成が
圧倒的に多くなっている…
(ご存じPowerPointは、今風スライド・紙芝居~、ですね)。
おととしや去年は、こんな様子。
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( 見落としもなく見やすく丁寧にまとめられた分析内容は、この年の相互評価でも上位に輝きました。)
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明らかに、今年の高2と高1に、
PowerPointを普通に活用できる生徒の割合が増えているのを実感します。
気になったので、この宿題を始めたおととしから、
2020年度の高2生(2003年度生まれ)、
2021年度の高2生(2004年度生まれ)、
2022年度の高2生(2005年度生まれ)、
2022年度の高1生(2006年度生まれ)
が提出(というか、Teamsにアップロード)した
課題の作成形態(媒体)を手元の記録で調べたところ、
こんな状況です。
2003年度生まれの現・大学1年生、
2004年度生まれの現・高3、
2005年度生まれの現・高2と、若い代ほどPowerPointで
課題を作成・アップロードしてくる率が上昇しています。
Word(Microsoftのワープロソフト)、PDF、スクショ画像の作品も、
文言と画像や図表を機能的に編成し、よく練られた構成のものが
かなり見られます(残念ながらそうではないものもあります)。
デジタル・ネイティヴであるZ世代の学年生徒の間でも、
媒体のスキルや選択に、大きな傾向の違いを実感するものがあります。
( おととしの高2生の「紙面画像」に見られた秀作。)
大きく変わったのは、レポート用紙等に筆記具でまとめた作品を
画像に撮ったもの、これを「紙面画像」と分類していますが、
その激減具合いです。おととしは35.2%でしたが、
去年は18.0%、そして今年の高2は0.0%、高1は1.8%です。
今年の高1生も、手持ちのPCの不具合により、やむを得ず、
紙面に記して提出を果たしたという(取り掛かったのが
〆切間際だったのは明白ですが、提出は果たしています)。
これは、課題はもはや、
紙に書いて出すものではなくなったことを意味しています。
( 2022/9/12 9:16 4年C組・地理総合 )
このスキル向上については、本校に入ってからという生徒もいるでしょうし、
中学校時代に受けてきた指導によるという生徒もいるでしょうし、
ここはひとつ、聞き取りのような感じで、Formsを用いて、
授業を担当している高2生、高1生に、自身の
PowerPointのスキルについてたずねてみることにしました。
ちなみに、私の今年度の授業担当は、
高2の地理A(従来の教育課程で最後のパターン)と、
高1の地理総合(新教育課程スタートで、地理は高1)。
両学年の指導内容は同じではありませんが、
夏休みの課題だけは、各自の出身地・郷土について、
市町村合併史を中心に諸項目を取材してまとめるというもの。
提出後に目を通すのは、昔だと担当教員一人でしたが、今は、
同じ学年の全生徒にも、9月の授業時間に読んでもらうという
流れでの実施を、おととしから始め、今年で3年目です。
( 2022/9/14 10:26 5年B組・地理A )
Microsoft社のチャットツール・Teamsを、校内の授業や連絡
で一貫して使うようになったのは、コロナ禍に見舞われる
前年からでしたが、
2020年の3月~5月、2021年の9月に実施されたような
在宅・オンライン授業がいつまた展開されるかわからない
状況下、夏休みの課題の提出以降の流れも、変えざるをえませんでした。
今週火曜から本日金曜にかけて投げかけた質問です。
設問1 PowerPoint を学校で自分で使うようになったのはいつですか? よく思い出せない場合は、「おそらく」と思われるあたりの学年で結構です。
今回は全数調査ではなく、
高2・高1には授業で「もしよければ」と声掛けをしての回答。
高3と中3も本日9/23の朝に「もしよければ」とTeamsにて
回答を募集。…廊下でちょっとお話を聴く程度でいいか
というスタンスでのミニ調査です。
PowerPointの使用開始時期が中学校以前だと
半数以上が答えているのは高2以下ですが、
高3はおそらく過半数が高校以降のようです。
特に高2は、4~5人に1人が、
小学生時代から学校で使い始めているようです。
ですが、高1で最多は「高1から」で 15人(39.4%)
と高率で、一概に高2と同傾向とはいえないようです。
設問2 PowerPointのスキルは、だれによってアップしましたか(だれに習いましたか)? 複数回答可です。
高校ですと情報科という教科の授業で習う機会がありますが、
「総合的な学習の時間」をはじめ、出身中学校などで
スキルを練成したという生徒も多いようで、「先生」が最多。
ですが、「友達」「自力」などとの複数回答も目立ちます。
「家族・親族」「自力」が若い学年ほど多くなる傾向も、
要注目でしょう。
設問3 PowerPointで課題や作品を作成して、今年(2022年)の3月までの間に、成功体験はありますか(たとえば、ほめられた、うまいといわれた、賞をもらった、自信が高まった、など)。
設問4 設問3の成功体験は、具体的にはどんなものでしたか。
設問5 PowerPointで何か得意技とかありますか。簡単なものでも自信があればなんでも構いません。
設問6 自分自身のPowerPointのスキル向上と、新型コロナ(Covid-19)の感染禍によるオンライン授業の普及との間には、関係があると思いますか(感じますか)。
設問6は若干、無茶振り的な質問で、当の生徒の皆さんに
とっては、コロナ禍に急激にICT化した授業環境との関連性
については大きな関心事ではないのかもしれません。
設問3・4の成功体験は、高2・高1の回答を見ますと、
公立校や本校中学の中3時代の発表で、高評価を受けたり、
優勝したなどの体験が励みや誇りとなっているようです。
高3生の回答は、「現代社会のプレゼンで1位になれた。」
など、本校入学後の経験の蓄積によるものが多いようです。
高3生も高2以下生もどちらもすばらしい躍進ですが、
この両者の伸びのタイミングに、今回着目している次第です。
設問5の得意技には、
ビジュアルや楽しさを一面に出す技術を挙げた答えより、
画面に映った文字や画像を人にいかに読んでもらえるように
表現するかについてを挙げた答えの方が目立ちました。
このほかにも目を見張る回答がありまして…。
「歴史の説明を、ストーリー仕立てでスライドに起こすことができる。人に教えられるくらい基本は押さえている。」
「イラストを多めに文字は大きくして、スライド1枚1枚の文字の情報量を少なくすること。」
「デザインを決めるのが好きで最初に決めちゃいます。そのデザインに合わせて、文字の色や図形の色を考えています。」
「ごちゃごちゃしないように図形とアニメーション使ってひとつづつ説明する。カラフルにしたり,画像を上手く使えてると思う。」
などの具体的な答えを自信をもって書き記してきたのは、
きょう回答を寄せてくれた高校3年生でした。
( 2022/9/13 10:09 5年B組・地理A )
いずれにいたしましても、
一つの技術が普及していく(イノベーションが展開する)過程
における微妙なズレについては、これまでにも様々な事例を
見てきました。携帯電話の普及時においても、
どの学年の生徒なら買ってもらえているのか、
などもそうでした(きょうだい間で揉める話もあったり…)。
プレゼンソフト・PowerPointについては、携帯電話と違い、
家庭や習い事などの契機もある中で、
学校教育の場が主体的な契機となって普及する傾向が
見いだされていますが、
デバイス(パソコン、iPad、スマホなどのICT機器)の
進化により、箱型PCの居並ぶ「コンピュータ室」だけでしか
デバイス操作ができなかった時代も過去のものとなり、
Wi-Fiの通じる空間で、同級生と対話を重ねながら、
PowerPointの共同編集を(帰宅後も含めて)ひたすら進め、
発表時のナレーションも含めて練り上げる、
さらには、他者のプレゼンを視聴し、批評する…。
確実に、
黒板だけで授業が展開されていた時代は終わりました。
( 2022/9/13 8:54 5年A組・地理A )
しかしながら、今から40年ほど前、自分の中高時代は、
世界史や地理、古文(古典)などの授業で、与えられた範囲を
予め調べを深め、当日各自でその説明を施しきるという活動の
連続がすでにあり、使用媒体こそ今の時代とは全く違いますが、
事物の在りようや、その序列や構成について深化を試みる機会
はその時代にもあったように認識しています。
X世代の自分には、
指導の場でのコンピテンシー(どのような能力が要されている
のか)の整備をも踏まえつつ、
進化するツール群の柔軟な取り込みをも怠らずに、
吟味と前進をこなすことで生活を続けられる感があります。
でもその前に、
健康・体力・気力の維持にも励まねばなりませんね。
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