これは古い物語
大田 萌子 2020.03.17
好きな言葉は何ですか?と聞かれる機会が結構あります。
先日、四字熟語の事を書きましたが、私が昔からずっと心に留めている言葉は
「これは古い物語、だけども常に新しい」
デンマークの作家、アンデルセンの「絵のない絵本」の中に出てくる一節です。
私はクラシック音楽を専門としていて、もう、100年も、200年も弾き継がれている
曲を演奏しています。何度も演奏するけれど、聴くたび、弾くたびに
作曲家との対話が出来る、毎回違う表情がある…それが魅力であり、苦しさであり…
いつも、曲と向かい合う時に、この言葉を思い浮かべ、常に新しい発見ができるように
意識しています。
ちなみに、この絵のない絵本の中で私が一番好きな話は第16話 プルチネッラ(道化)です。
アンデルセン版千夜一夜物語のような物語で、一つ一つのお話はとても短いです。
先ほど検索していましたら、青空文庫に全部載っていました。ぜひ読んでみてください。
さて、好きな言葉を語ったところで、またまた好きな曲をご紹介。
今日はロシアの作曲家、ボロディンの残した曲を2曲ご紹介します。
ボロディンは、1887年まで生きた作曲家で、代表作は「韃靼人の踊り」ではないでしょうか。
某京都へ行こうなCMでも使われていて、皆さん一度は聴いたことあるのではないかと思います。
そのボロディンが作曲した数少ないピアノ曲、小組曲。7曲からなる組曲で、草稿には「ある若い娘の愛の小詩」と副題がつけられていました(なぜか出版の際には削除…)7曲にもそれぞれ副題がありましたが、同じように削除されて出版されました。
まず、第1曲「尼僧院にて」副題 大聖堂の円天井の下で少女は神を思うことはない
そして第5曲「夢」副題 彼女は踊る人など考えもしない
尼僧院にては、重々しい大聖堂の中で鳴り響く鐘の音から始まります。
その中で、神について考えることもない少女…一体なにを考えているのでしょう。聖堂の石の冷たさ
が伝わってくるような、そんな曲でとてもお気に入りです。
踊る人の事を夢見ない彼女は、何を一体夢見ているのか…。想像は尽きません。